人間としての音楽家。

先日の音に関する話でモーツァルトの耳があった本の紹介をしておきます。
音楽と病―病歴にみる大作曲家の姿音楽と病―病歴にみる大作曲家の姿
(2007/11)
ジョン オシエー

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音楽とは直接関係がないと言えば、音楽史のように必読書ではないですが、病という生きている上でかなりの苦悩をどう受け止め、作曲・演奏していたのかを知ると、大作曲家の生身の人間の姿をよりリアルに感じることができます。

死が当たり前で会った時代、子供が生きて成長するだけでも大変だったので、病弱な作曲家も彼らが作品を残すほど長生きできた、という点ではものすごく運が良いと言えます。
モーツァルトも7人の兄弟でしたが、ヴォルフガングとナンネルの二人を除いてほとんど幼くして亡くなったそうです。

それにしても、大作曲家となると大都市へ住み、大都市になると人口が多く、衛生面が悪くなるので伝染病へのリスクが高くなる、というようなジレンマ。
とにかく音楽とは全く関係がないんですが、抗生物質が発明される以前と以後の違い、相当なものです。
沢山の大音楽家がさまざまな病気に悩むのですが、「水銀治療」という全くもって誤った治療がかなり行われていたことがわかり、パガニーニは水銀中毒であったのでは、とのことでした。
新生児(生後1ヵ月未満)や乳児(生後1年未満)の死亡率は、主要先進国の中でもっとも低い水準を保っている日本という国、色々な治療がある現代の医療は本当に恵まれているなぁと思えました。

母校にて。

4月から母校である愛知県立明和高等学校音楽科の非常勤講師になりました。
最近まで長いこと学生をやっていたので自分が教えてもらっていた先生方に「先生」と呼ばれると不思議な気分です。

音をどのように聴くか〜その3

さて、最終回です。
長く書いて、後ちょっとで終わりの時に一回消えてしまいました。
かなりショック・・・

では本題。
音をどのように聴くか調べて最終的に残ったの疑問が

耳たぶや耳の形が音の感知に大きな影響を与えているのなら、耳の形によってほかの人と自分の聞いている音は違うのか?

ということでした。

まずは耳の形とは…
人間の耳介は、(結果として)集音と増幅機能を持つように複雑に入り組んだ鞍骨の凹凸によって形づくられていて、この凹凸形状はきわめて著しい個人差があります。耳介の長さ、軟骨の長さ、耳介の幅などの成長は、耳長は16〜17才、耳幅 は10歳前後で男女とも成長が止まり安定期に入り、40歳前後で少しずつ成長することが報告されています。

このように、耳は指紋のように一人ずつ違い、耳介( みみたぶ)の構造が上下非対称であるこや凹凸形状により、到達した音波が耳介により反射干渉します。
先日紹介したダミーヘッドでの録音も、ダミーヘッドとよく似た頭や耳の人はよいのですが、そうでない人には、後ろが前に聞こえたりと、音の方向が変化して聞こえたりすることもあるそうです。

では、「耳がよい」というのは脳の処理能力と共に耳の形の凹凸や集音機能による違いもあるのでしょうか。
形によって違いがあるならどんな耳が最高に良い形なのか?
大作曲家や演奏家の耳の形ってどうなってるのか?

と思ってるときに買った本になんとモーツァルトの耳の図があったのです!!!
ものすごい偶然。

Mozart.gif
左:モーツァルトの左耳   右:一般人の左耳

なぜこのような図があるのかと言うと、モーツァルトの左耳は千人に一人いるかいないかの割合の変形をしていたのだそうです。
そのため、「モーツァルトの耳」は医学書で良く取り上げられました。
この変形は、ほとんど片耳にしか現れない変形で、耳が平らで耳たぶが無いなど一般の耳と大きく違います。
モーツァルトの息子にも同じ耳の変形があり、この図も息子のフランツ・クサーヴァーをモデルにしたらしいです。

家系に現れる変形ということは名音楽教師である父レオポルト、徐々に弟の才能の陰に隠れたが幼いころは傑出したチェンバロ奏者やピアニストとして認められていた姉ナンネル、「モーツァルト2世」として活動した息子クサーヴァーと考えると「耳の形による影響」はあるのかもしれない・・・とも思えるのです。
残念ながらモーツァルトの息子クサーヴァーは生涯独身で、兄カールと同じく子供をもうけなかったため、大作曲家の血筋は途絶えました。

ということで、今回の耳の形の謎について、科学的で明確な答えは出ないとは思うのですが、音楽にも耳たぶが大きい「福耳」が良いのかな?と考えていた時、モーツァルトの耳たぶがまったくないという事で、「福耳かどうかは関係ない」という事がわかったのでした。

このモーツァルトの耳の図があったのはこちら。

音楽と病―病歴にみる大作曲家の姿音楽と病―病歴にみる大作曲家の姿
(2007/11)
ジョン オシエー

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今日読み終わりましたが面白かった!
こちらの感想はまた後日。

音をどのように聴くか〜その2

なぜ私たちは音の聞こえてくる方向がわかるのでしょうか?

答えは「耳が二つあるから」です。
要は、左右の耳それぞれに聞こえる音の、音量と時間の微妙な差を認識して判断しているということ。ただ、これは単純なことのように見えて、実は意外に複雑な仕組みなのです。
音の豆知識http://www.toa.co.jp/otokukan/otomame/theme1/1-2.htmより

dgm02a.gifdgm02b.gifdgm02c.gif
上記の3つの絵のように両耳に到達するわずかな時間のズレを脳が認識し、それによって方向を聞き分けているのです。
実際には直接届く音、上下左右の壁から反射する音、両耳に届く微妙な時間差や音質の違いなどで方向を判断します。
これだけでもよく考えたらすごいことだ!と驚くのですが、まだまだ終わりません。

では、耳は左右に前を向いてついているのに前後はどうやってわかるのか?

ここが今回のメインとなります。
答えはとっても意外なんです。
耳が音の前後を知るのに必要なもの、それは「耳たぶ」!
耳たぶを含む耳の形,それこそが私たちの音の方向を把握するのに必要なのです。
もし耳の突起をなくして耳の穴(外耳道)だけにすると前後の聞き分けができなくなるそうです。

聴覚系の感覚器
外耳は耳介(じかい)、外耳道からなる。耳介は、パラボラアンテナのように空気中を伝わる音声の音圧をあげて集音する機能を持つのみならず、その複雑な形態から、音源の方向によって音響伝達特性が変わることで上・前後・左右といった音源定位に役立っている。ウィキペディアより

最近は、人が聞いている音そのままを録音するために「ダミーヘッド」という形のマイクがあります。
dal1_s.jpg
ダミーヘッドの耳の中にマイクを仕込んで録音できるので、ダミーヘッドの頭や耳によるスペクトルの変形効果を反映し、単に左右だけではなく、あたかも耳のそばとか、頭のまわりとかで音がなっているような感じが再現できるのです。

音楽を演奏する時に「どう聴こえるか」を考えながら演奏しますが、「どうやって聞いているか」を今まで知らなかったので、今回偶然勉強できて楽しかったです。
さて、本題に行く前に長くなったので今回はここまでで。
更新が遅いのに長いしマニアックでごめんなさい。
ま、どなたかが「へぇ〜」と思ってくれれば嬉しいです。

作曲家が言葉の芸術「詩」に託した思い。

昨日の続きは後日書くとして今日読んだ廣澤さんのブログがあまりに嬉しかったのでご紹介。

メゾ・ソプラノ廣澤敦子さんのブログ「音楽家の日常より」
http://yaplog.jp/mezzoatsuko/archive/1985

21日の毎日新聞の夕刊
コンサートを読む:今井信子と廣澤敦子の二つの「冬の旅」=梅津時比古

◇言葉が音に変わる空間

 音は言葉を濾過(ろか)し、変容させる。

 このほど聴いたシューベルトの歌曲集「冬の旅」の二つの公演は、翻訳の役割を明確にして、歌曲における言葉の構造に、新しい視点をもたらしていた。
(中略)
メゾソプラノの廣澤敦子とチャールズ・スペンサーのピアノによる「冬の旅」では、日本語訳が字幕によって舞台上に投影された(12日、兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホール)。「冬の旅」の主人公は男性なので、女性によって歌われることはあまりない。だが廣澤の声は女性か男性かの問題を全く感じさせなかった。詩句の中の、陰りを帯びたはずれ者としての主人公の感性に、彼女の表現が敏感によりそっていたからであろう。人間存在の底からの声のようなものが聞こえてきた。

 たとえば第6曲「あふれ流れる水」で「あつくたぎる僕の涙」の詩句をシューベルトがいかに悲しい音で描いているか、廣澤の声が気づかせてくれる。そこに合わせて日本語訳が字幕に浮かび上がると、その言葉がまさに音に吸い寄せられてゆく。

 スペンサーのピアノも詩に即した表現に満ちあふれ、たとえば第12曲「孤独」では空虚の果てから音がせりあがってきて響き、第15曲「カラス」では、強調された左手の不気味な旋律に乗って、カラスが私たちをあの世へ連れて行こうとする。

 曲間がまた、演奏そのもののようなスペンサーの間(ま)の取り方で、切れながらもつながり、つながりながらも切れ、曲集全体がシューベルトの深奥の一点に向かってゆく。ドイツ語の歌というよりも、シューベルトの精神が聴こえてくる。

 言葉の意味の側面をよりよく伝えようとするこのふたつの公演は、ひとつは作品を異化し、ひとつは作品に同化した。ひとつは作品空間の幅を広げ、ひとつは絞り込んで深めた。

 それは、語りつくそうとすればするほど言葉が音に変わって消えてゆく歌曲の本質を、思わぬ形で表出していた。

120627-02.jpg

彼女の歌を通して知る「詩」の世界は本当に素晴らしいです。
石川啄木の詩による”初恋”は以前パラミタミュージアムで始めて聴いてその素晴らしさに感動しました。
6月には念願だった愛知での演奏会です。
リクエストして”初恋”も歌っていただけますのでお時間があれば是非お越しください。

第179回あじさいコンサート
歌物語〜歌とフルート、ピアノで織りなす詩の世界〜

日時 2012年6月27日(水)
開場/18:30 開演/19:00

会場 幸田町民会館あじさいホール
料金 <全席自由> 一般800円

http://www.happiness.kota.aichi.jp/hall/event/ajicon/120627.html
プロフィール

ヘムヘム

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フルート吹いてます。
ピッコロも吹きます。

音楽や食のことなどつれづれと。

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